2023年10月から年収の壁・支援強化パッケージが公表され、色々対策が考えられています。
今回は、従業員の手取りが減ってしまう事を防ぐための施策として
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)が打ち出されました。
この助成金は従業員の手取り減少を防ぐため、会社が保険料負担に相当する金額を手当として
支給した場合、その金額を国が補填するというものです。
更に従業員の労働時間の延長などにも取り組めば、上乗せで助成金が支給されるもので
従業員の社会保険加入の促進や人手不足対策に効果があると考えられています。
従業員確保で利用しようと考えている会社さんも多いかもしれませんが、この助成金を
利用するためには新しい手当を一つ作成する必要があります。
今回は、手当を作る際の注意点や、やってはいけない事を解説します。
助成金を貰うために必要な新しい手当とは?
今回の助成金を利用するためには必ず新しい手当を作成する必要があります。
「社会保険適用促進手当」と言われるもので、いわゆる従業員の手取り減少防止のため
の手当となります。
この手当は、標準報酬月額や標準賞与額という保険料決定の基礎に入れなくてもよくなるため
手当を支給することでトータル保険料が高くなるということもなく
正しく使用すれば会社も従業員も共にメリットがある物となっています。
「社会保険適用促進手当」の注意点
社会保険適用促進手当を支給する時の注意点がいくつかあります。
名称は「社会保険適用促進手当」とする事
手当の名称は自由とは言われていますが、標準報酬月額の算定時に除外されていることが
はっきりわかるように名称は「社会保険適用促進手当」とすることが望ましいとFAQに記載されて
います。好みで名称を変えることもできるようですが、後々トラブルにつながる可能性があるため
名称はそのまま「社会保険適用促進手当」とする方が良いでしょう。
「社会保険適用促進手当」の支給方法によっては残業代等の対象になる
「社会保険適用促進手当」は標準報酬月額の計算からは除外されますが、その他のものから
除外されるわけではありません。
たとえば、所得税・雇用保険料などの計算には含まれます。さらに支払い方によっては残業代計算
には含む必要があります。
こちらもFAQに記載がありますが、毎月決まって支給していると残業代割増賃金の計算に含める
必要があります。
しかし、毎月支払われない場合は残業代割増賃金の計算には含まれないとも記載されているため
どの様にするのが会社にとって一番いいかを考えて支給方法を決めて下さい。
月給が10万7,000円以上に人は「社会保険適用促進手当」の意味が無い
月給が10万7,000円以上になると保険料を考慮しても年収106万円を超えていて
壁を考慮する必要が無いため、今回対象外となっています。
今後、改善などがあるかもしれませんが、標準報酬月額が11万円以上の方は
手当を支給しても標準報酬月額の対象になってしまいますので、注意が必要です。
新しい手当を支給するため就業規則への記載が必要
手当を作るなどの場合は、就業規則に記載する必要があります。
この手当を出すために就業規則に書き、労働基準監督署への提出なども必要に
なるので、その手続きも忘れないようにしましょう。
さいごに
まだまだ始まったばかりで、今後も改善される可能性があります。
ただ、現状それほど使い勝手がいいわけではないですし
「社会保険適用促進手当」を使った助成金はターゲットも狭く感じます。
※ターゲットは2023年11月時点では101人以上社会保険加入者がいる企業に勤めている
年収106万未満でより多く働きたいと思っている人です。
手当を出す方ではなく、労働時間延長による助成金を活用するなど
会社にとってメリットがある方法を考え、活用してみてください。
もし対象者がいる場合は、しっかりと支給要件などを確認し、助成金を活用してください。
ご不明点があればこちらからお問い合わせください。
リンク:厚生労働省_キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
リンク:厚生労働省_年収の壁・支援パッケージFAQ
リンク:厚生労働省_社会保険適用促進手当Q&A