社労士が解説する就業規則の作り方~総則・人事~

社労士が解説する就業規則の作り方~総則・人事~ 就業規則

 就業規則は憲法のように沢山の項目や条文で成り立っています。
まさに、会社の法律といえるルールの集まりです。
沢山の項目がありますが、今回はその中から“総則”“人事”に関する既定の作り方の解説です。

総則の作り方

“総則”とは一般的に規程の最初に書くもので「目的」「定義」等、規程全体に共通する事項を定めます。
会社によっては“総則”の前に“前文”を作り、制定の趣旨を定めたり、会社のポリシーや経営理念などを挿入し、従業員と共有する場合もあります。
このような規定は法律で決まっているものではなく、就業規則をまとめ上げる為の「テクニック」だと考えてください。
では、大まかな項目の作り方を書いていきます。

【目的】

「目的」の規定は任意の規定で、通常は自社の就業規則であることを書けば十分ですが、
就業規則に定めがない事柄は法令によって処理することを定めて、労働基準法を、もれた事項についての“受け皿”とすることをおススメします。

[例]

(目的)
 第〇条 この規則は、株式会社〇〇(以下「会社」という)の社員の服務と労働条件、その他就業   についての事項を定めたものである。
   2  この規程及びこの規則に定めのない事項については、労働基準法その他の法令の定めるところによる。

【定義】

「定義」とは、主に「社員の定義」です。
どのような手続きで入社した人間が”社員”という身分になるのか、社員でも、「一般職」や「総合職」など役割の異なる社員の呼び分ける場合などの基準の定義を書きます。
会社にアルバイトやパートさんいる場合、正社員との違いを決め、条件が違うことを明確にする必要があります。
法律上、正社員とパートさんに違いはありません。
しっかりと区別して決めておかないと、正社員の手当などをパートさんに支給する必要になってしまいかねません。しっかりと定義し、運用できるようにしましょう。
[例]

(社員の定義) 
第〇条 この規則において社員とは、第〇条に定める手続きを経て会社に採用された者をいう。

【適用範囲】

「適用範囲」とは就業規則を適用する労働者の範囲を決めるもので、
「社員」に適用するのか「アルバイト」に適用するのか、などを定めるものです。
ここをしっかり定めておかないとトラブルとなり、余計な支払いが発生する可能性が出てしまいます。
(退職金の規定を作ったはいいが、誰に払うかを規定しないと、アルバイトにも退職金を支払わなければならなくなります。)
曖昧にせず、しっかりと明確に分けるように規定します。
[例]

(適用範囲) 
第〇条 この規程は、前条に定める社員に適用する。ただし、期間を定めて雇用する次の者にはこの規程は適用せず、別に定める規程を適用する。
     1.パートタイマー
     2.契約社員

※パート、アルバイトに社員用の就業規則を適用したくない場合は、必ず別項目で定めてください。
 就業規則があるのに、適用されない人がいるのは法律違反です。
 就業規則を1つしか作っていない場合は、その規程が全員に適用されてしまいます。

人事の作り方

“人事”とは会社に人を雇い入れる、人を異動するといった事を規定する項目です。
会社によって考え方が全く違うので、会社によって特色が出るのではないでしょうか?
また、従業員にも比較的興味のある項目でもありますので、
誤解が無いようわかりやすく規定し周知することが
大事だと思います。
では、以下に規定の例を挙げたいと思います。

【募集・選考】

「募集・採用」は会社に人を雇い入れる際に必ず必要となる項目です。
入社後の従業員が見る就業規則に、入社前の事柄を規定するのはなぜだろう?と疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。
この規定は、社内の人間に採用方法の徹底を示すためのものです。
前項の”適用範囲”と合わせることで、この項目に規定されている方法で採用された従業員が正社員である。と規定することができます。
[例]

(採用選考)
 第〇条 会社は、入社希望者のうちから選考して社員を採用する。
   2  入社希望者は、次の書類を事前に会社宛に提出するものとする。
      ただし、会社が提示した場合は、その一部を省略することができる。
      ①自筆による履歴書(3ヶ月以内の写真貼付)
      ②中途採用者は、職務経歴書
      ③新規卒業者は、最終学校卒業(見込)証明書、成績証明書
      ④その他、会社が提出を求めた書類

【労働条件の明示】

「労働条件の明示」は文字通り、働く上での労働条件についての規定です。
会社は人を雇う時には、その人がどのような条件で、どのような業務を、どこで行うかを書面で伝えなければなりません。
就業規則の一部をコピーして出したり、「労働条件明示書」を作り、入社する人に明示してください。
ここの規定では、明示方法を規定しておきます。
[例]

(労働条件の明示)
 第〇条 会社は、社員の採用に際し、採用時の賃金、労働時間、その他の労働条件が明らかになる書面を交付する。

その他にも、「試用期間」を作る時には「試用期間」についての規定を
「異動」や「出向」などがあり得る会社の場合はそれぞれについての規定を作成します。
「休職」「復職」といった項目も規定しておいた方がいいかと思います。
この様に、総則や人事”はかなり幅広く規定する必要があるので、別規程で作成している会社も多いかと思います。

どうしてこんなことまで?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
就業規則での規定は“トラブルになった時”に真価を発揮します。
規定しておかない場合、またはちゃんと運用できていなかった場合、従業員の言い分に対抗することができなくなってしまい、会社として大きなダメージを負ってしまうこともあります。
作成する際には、できるだけ細かい事柄にも気を配り作成してください。

就業規則の作成や内容の質問に関しては、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。

また、厚生労働省にて就業規則作成ツールも公開されています。
このツールを使用し、作成した規程をそのまま使用することはお勧めしませんが
一通り、作成することはできますので、確認してみてください。

リンク:就業規則作成支援ツール(厚生労働省)

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