今回は“賃金”についての規程の作り方を解説します。
“賃金”は働く人のモチベーションの一つであり、関心の高いものです。
しっかりと分かりやすく作成し、質問をされたられたらすぐに回答できるように準備をしてください。
また、普通“賃金”じゃないと考える様なものでも、労働基準法では“賃金”されているのでそのあたりもしっかりと規定しておくようにします。
前回の“労働時間”の規定もそうですが、今回の“賃金”の規定も労働者とのトラブルの時
必ずチェックされます。しっかりとした規程を作成し、会社を守れるようにしましょう。
多くの企業は別規程で“賃金規程”を定めています。
分かりやすくすることも理由ですが、賃金に関する事柄は問題が発生した際に都度変更が必要になるため、変更頻度の多い賃金規程を別に定めることで、変更する規程を限定できます。
賃金とは?
“賃金”とはなんでしょう?
会社によって賃金制度の内容が違っているので、聞く会社によって答えが違ってくると思います。
ですが、労働基準法では「賃金とは賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」となっております。
つまり、交通費や退職金といったものも賃金になる場合があります。
※労働基準法では、“賃金”となる判断基準を例示しているので確認してみてください。
リンク:徳島労働局(労働基準法の解説)
賃金支払いのルール
“賃金”は働いている人にとって生活を維持する為に必要不可欠なものなので、支払時期や支払い方法などをすべて会社の自由にするわけにはいかないという事でルールを設定しています。
それが“賃金支払いの5原則”です。
1.通貨払いの原則(通貨で支払わねければならない)
2.直接払いの原則(本人以外には原則的に渡せない)
3.全額払いの原則(勝手に給料から天引きしてはいけない)
4.毎月払いの原則(毎月1回以上は支払わなければいけない)
5.一定期日払いの原則(給料日は決まった日でなければいけない)
以上の5つを守るとともに、しっかり就業規則内で定める必要があります。
また、それぞれの原則にも例外がありますので、例外も確認してみてください。
割増賃金の計算方法
労働者を法定労働時間を超えたり。休日や深夜に働かせると割増賃金を支払わなければいけません。
割増賃金率は以下になります。
・法定時間外労働:25%以上
・法定 休日労働:35%以上
・深 夜 労 働:25%以上
※月60時間を超えた法定労働時間外労働は50%以上となっています。(中小企業を除く)
中小企業も2023年4月から対象になります。
また、割増賃金の計算をする時に除外しても賃金は以下の7つのみです
1.家族手当
2.通勤手当
3.別居手当
4.子女教育手当
5.住宅手当
6.臨時に支払われた賃金
7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
しっかりと確認して、未払い賃金が発生しないように気を付けましょう。
賃金規程の作り方
ここから賃金規定のモデル規定を書きますが、“賃金規程”は会社にり違ってきますので、参考程度に考えてください。
御社の今のルールに即した規程を作成するようにしてください。
★賃金の体系
会社がどのような事柄を基準に給与を支払うかを具体的に規定する条項です。
または、給与の支払い方を決定する規定です。
条文例は、月給制の従業員で、自己都合による休みや働いていなかった期間がある場合
その分を控除する条文となっています。
【例】 (賃金の体系) 第〇条 賃金の体系は、次のとおりとする。 ①月例賃金 基準内賃金-基本給 ②臨時の賃金-賞与 (賃金の支払形態) 第〇条 賃金は月給制とするが、社員が次のいずれかに該当する場合は、出勤日数について 日割計算で賃金を支給する。ただし、計算期間の対象となる日数が15日を 超える時は、逆に欠勤日数分を月額から控除して支給する。 ①賃金計算期間の途中の入社、退社の場合 ②賃金計算期間の途中に休職の開始や復職により不就労日があるとき ③業務上の負傷もしくは私傷病により欠勤し、社会保険等から保障される時 ④賃金計算期間の途中に産前産後休暇、育児・介護休暇の開始または復職 により不就労日がある時 ⑤就業規則に規定する出勤停止処分を受けている時 ⑥無断欠勤した時
★賃金の支払方法の定め方
ページ上部にて書いた“賃金支払いのルール”にあることを定めます。
その際に、賃金の計算の期間の区切り方、給料日などを定めるとともに、給料を控除する場合の計算方法や状況も記してください。
【例】 (不就労控除) 第〇条 社員が、遅刻、早退、私用外出した場合については、年次有給休暇その他の規定が ある場合を除き不就労となる時間の賃金を15分単位で計算し控除する。 なお、実際に不就労となる時間相当額を超える控除額は制裁扱いとする。 (日額および時間額の計算) 第〇条 この規程において、不就労控除の計算の基礎となる賃金の日額および時間額は、 次の計算による。 時間額=基本給÷1ヶ月の平均所定労働時間 日 額=時間給×1日の所定労働時間 2 1ヶ月の平均所定労働時間は、毎年、前年4月1日から本年3月31日までの 1年間を単位として計算する。 (計算期間および支払日) 第〇条 賃金の計算期間は、毎月1日から毎月末とし、翌月25日に支給する。 ただし、支給日が金融機関の休日に当たる場合は、その直前の営業日とする。 (支払方法) 第〇条 賃金は原則、本人指定の本人名義の預貯金口座へその全額を振込により支給する。 ただし次に掲げるものは支給額より控除する。 ①所得税 ②住民税 ③健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料 ④社員代表と書面により協定を締結した時は、その協定で控除することとしたもの 2 口座振込みを希望する社員は、所定の方法により、本人名義の預貯金口座を 会社に届け出なければならない。
★昇給・降給の定め方
就業規則には“昇給”の項目を必ず定めなければなりません。
トラブルにならないよう対象者や除外する人間を明記してください。
また、降給する場合は就業規則に明記が必要です。
必ず定めておいてください。
(例)
【例】
(定期昇給)
第〇条 定期昇給は基本給について、原則毎月4月1日に実施する場合がある。
ただし、次に掲げるものについては除外する。
①毎年1月1日以降に採用された者
②昇給時期に休職または産前産後もしくは育児・介護休業中の者
2 昇給の決定が遅延した場合、支給日前に退職した者には差額は支給しない。
★賞与の定め方
いわゆる“ボーナス”です。支給不支給は会社に決定権があります。
支給する場合、支給しない場合をしっかり規定することで、ボーナスを支給しなかったとしても会社の言い分を聞いてもらえます。
どの様な場合に支給する、またはどうなったら支給しないかをしっかりと規定してください。
(例)
【例】 (支給時期) 第〇条 賞与は、次の支給対象期間全てに在籍した者でかつ、賞与支給日に在籍している者 について、毎年7月および12月の2回、会社の業績 により支給することがある。 2 支給対象者は支給日現在在籍している者とし、次の者には支給しない。 ①賞与支給対象期間中に、出勤停止以上の処分を受けた者 ②その他、会社が賞与を支給することについて適当でないと認めた者 3 支給対象期間の2割以上を勤務しなかった者は、所定勤務日数における出勤日数 の割合によって減額した賞与を支給する。 (支給基準) 第〇条 各人の賞与の額は次のとおり支給する。 ①賞 与=基本賞与+成果賞与 ②基本賞与=基本給×支給係数 ③成果報酬=成果賞与単価×評価ポイント ※支給係数は会社の業績に基づき、その都度定める ※評価ポイントは各人の評価結果に基づき決定する
★退職金
退職金は会社に在籍している期間に応じて退職した後に支給されるものをいいます。
退職金を就業規則に規定する場合は、支給対象者や退職金の金額の計算方法、支払方法を記載し定める必要があります。
【例】 (退職金の支給) 第〇条 勤続20年以上の労働者が退職し又は解雇されたときはこの規定に定めるところにより 退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続25年未満の者には退職金 を支給しない。また、懲戒解雇された者には、退職金の全部または一部を支給しない事がある。 2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、 その後の再雇用については退職金の支給はしない。
まとめ
労働者の生活の糧となる“給与”についての規定なので、トラブルにつながる可能性も高くなります。
また、給与の規定は間違いの無いように注意深く、しっかりと定めて下さい、
想定していない人間に賞与や手当を支給をしなければいけなくなるなど、会社の損害に直結します。
私への問い合わせでも、支給対象者の設定をしっかりとしていなかった為にアルバイトに退職金を支払う羽目になった案件もありました。
その時も、規定された条文では、アルバイトに賞与の支給するしかありませんでしたので、会社はアルバイトに対する賞与を支払いました。
この様に、想定していない人件費を発生させないためにもしっかりと作成してください。
また、本当にトラブルに繋がりやすい項目です。
分からないこと疑問に思う事などありましたら、すぐにご相談ください。
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