外資系企業の大量解雇は有効なのか?~社会保険労務士が解説する解雇規制~

外資系企業の大量解雇は有効なのか?~社会保険労務士が解説する解雇規制~ 労務管理

最近、Twitter社の大量解雇が話題となっております。
日本と欧米では解雇の仕方や解雇の難易度に差があります。
Twitter社はアメリカの会社で、アメリカの解雇や労働慣例を主に考え対応をしています。
しかし、Twitter社の日本支社でも同じように対応することができるのかを解説します。

日本とアメリカの解雇ルールの違い

日本と欧米では解雇に関するルールが全く違います。
このことを知らず、Twitter社という有名企業が解雇しているのだから、自分の会社でもできると考え実行することはお勧めしません。
それぞれの違いを簡単に解説します。

アメリカの解雇ルール

アメリカでは、”Employment at will”という考え方を基本としています。
これは、雇用契約は会社・従業員双方の自由意思によって締結され、いつでも、理由を問わず契約を打ち切ることができるという考え方となっています。
簡単に言うと、従業員が自由に退職できる代わりに、会社も自由に解雇できるという意味です。

もちろん法令に違反している場合や、相手の権利を著しく侵害している場合には訴訟になり、大きな問題に発展することもあり得ます。
そのようなことにならない様、しっかりと法令に対応し、相手の権利を尊重しつつ対応をします。

この様な解雇ルールや雇用慣例なので、アメリカでは人材が流動的となっています。

日本の解雇ルール

日本では、長らく年功序列や終身雇用が当たり前の環境でした。
長期的に雇うことを前提にしていて、解雇させない様なルールになっているため、
正直、絶対にトラブルにならない解雇はできません。

本人に問題があっても、しっかりと指導をしたり配置転換をしたり教育したりし業務を続けられるように会社が努力を行うことを求められます。
さらに、本人の問題行動が会社の経営に大きな損害を与えるような場合でないと解雇できません。
まして、本人の問題でなく、整理解雇などの場合、もっとハードルが高くなります。

この様な高いハードルを越えて解雇をしたとしても、その後、解雇無効の訴訟がされたりします。

解雇の制限が厳しい日本では、人材が固定的となっています。

Twitterでの大量解雇は問題ないのか?

日本とアメリカでは解雇ルールや、雇用慣行が大きく異なります。
そんな中、Twitter社が行った大量解雇は問題にならないのでしょうか?

結論から言うと、日本の解雇ルールには適合せず、解雇無効と言われる可能性があります。

Twitter社はアメリカの会社ですが、日本にある会社には日本の労働基準法や解雇ルールが適用されます。
アメリカでは”Employment at will”の考えのもと、解雇の事由が会社にありますが、日本では、その考えの契約ではなく、厳しい解雇制限の壁を越えなければ解雇はできません。

場合によっては、解雇無効の訴えなどで訴訟を起こされる危険性があります。

解雇無効の訴えは起こされない!?

個人的には、日本の解雇ルールに反していても、訴訟にはならないと考えています。
なぜなら、アメリカの会社では、解雇する際には解雇予告手当だけでなく、慰謝料を含めた金額で3カ月から6か月分をまとめて支払う傾向にあります。
こうすると、後日、解雇無効で訴えられた場合、示談になると慰謝料の支払い義務が発生するのですが、その金額が3か月分程度になる事が多いようです。
すると、退職時に、すでに慰謝料として支払っているので、追加で支払う必要がなくなります。
これを従業員側から見ると、訴訟をしてもメリットが全くなく、訴訟費用分だけマイナスになるので、訴訟までしないというケースになります。

アメリカでは権利社会の為、相手の権利を尊重し、しっかり対応します。
解雇時には、日本のように1カ月間の解雇予告後に解雇し、特に手当を支払わないということは無く、即時解雇を行う代わりに、法律で定められている以上の金銭を支払うことがほとんどの為、金銭により損害を補填する裁判には発展しづらく、トラブルがあまり表に出ません。

今も、日本にはたくさんのアメリカの会社が入っていますが、解雇が無いわけではなく、解雇後、訴訟しても金銭的にメリットが出ない金額を支払うため、訴訟が少なくなっているのです。

実際、どの程度の金額が支払われたのかはわかりませんが、しっかと慰謝料の支払いをしているので、訴訟まで発展することは、ほとんどないはずです。

日本企業での解雇対応

今回のTwitter社の集団解雇により、日本でも解雇が簡単にできると考える方もいらっしゃると思いますが、絶対に解雇しないでください。
準備をしない解雇は、まず無効とされます。
日本では、解雇はできないと考えて下さい。

どうしても解雇しなければいけないなら、しっかりと対応し、訴訟にならない対応が必要です。

また、解雇の際の手順も間違えられません。
しっかりと専門家の意見を聞きながら対応してください。

こちらも参照ください。
リンク:厚生労働省_労働契約終了のルール
リンク:アルバイト・パート・社員の解雇(クビ)でお困りの方

解雇でお悩みの方はこちらからご相談ください。

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