正しい欠勤控除の計算方法~社会保険労務士が解説する労務管理~

正しい欠勤控除の計算方法~社会保険労務士が解説する労務管理~ ブログ

従業員さんが病気になったり、用事ができたり、はたまた様々なトラブルにあってしまい
会社を休んだり遅刻したり、早退したりすることはよくあることだと思います。
「その時の給与計算がわからない」、「難しい」と相談いただくことが多くあります。
そこで、専門家の社会保険労務士が従業員さんが休んでしまったり、遅刻・早退したときの
欠勤控除の計算方法を解説します。

法律上における正しい欠勤控除

実は、欠勤控除に関する法律はありません。
労働基準法やその他の関係法令で欠勤控除の計算方法が決められた条文は存在しないのです。
そのため、しっかりと会社の就業規則や雇用契約書で会社と従業員間で決めておかないと
トラブルになってしまいます。


ただし、就業規則で決めるからと言って会社が自由に決められるわけではありません。
最低限守らなければいけない法律は存在します。
例えば、賃金全額払いの原則(労働基準法24条)が欠勤控除では問題になることが多いです。
これは賃金の支払いに関する法律で
・賃金は通貨で支払う
・賃金は労働者に直接支払う
・賃金はその全額を支払う
・賃金は毎月1回以上支払う
・賃金は一定の期日を定めて支払う

この5つが「賃金の支払い5原則」と呼ばれる法律で、5分の遅刻なのに30分分の給与を控除するや計算で1円単位の細かい金額になるので、端数を切り捨てるなどをしてしまうと、この「賃金の支払い5原則」のうち賃金はその全額を支払うに違反してしまいます。

このように細かいルールを守りながら計算をする必要があります。

一般的な欠勤控除の計算方法

欠勤控除には様々なやり方があります。
前述したように法律を守り、就業規則で規定をした通りに計算をします。
一般的な欠勤控除の場合は次になります。

欠勤控除の計算式

欠勤控除額=月の給与額÷月平均の所定労働日数×欠勤日数

これは一般的な計算方法になります。
毎月の出勤日数は変動するので1年間の出勤日数を12で割って月の平均出勤日数を計算し、これを利用して計算することが一般的です。

毎月の実際の出勤日数で計算すると、出勤日数が多い月と少ない月で控除される金額が変わってしまうのでよくない場合があります。
毎月の控除額が変わらないよう、この計算式を規定し使うようにしてください。

遅刻や早退の計算方法

遅刻・早退控除額=月の給与額÷月平均の所定労働日数÷所定労働時間×遅刻・早退時間数

こちらが一般的な遅刻・早退の計算方法になります。
欠勤控除の計算式を使い、その従業員の時給を計算します。
この時給を使用し、労働しなかった時間分を控除します。

控除計算時の注意点

ルールをしっかりと決めることが大事ですが、そのうえで、労働基準法24条の法律に違反しないようにすることが大事です。
控除する金額を計算する時に端数切り上げは絶対にしないようにしましょう。
四捨五入でもしてはいけません。
控除する金額を計算する時の端数処理は切り捨てるようにしてください。
給与から控除することができるのは働かなかった時間分の給与だけです。
働いた時間分の給与を間違って控除してしまうと法律違反になります。
絶対にしないように気を付けましょう。

欠勤控除などの計算で最も大事なことは?

欠勤控除をすることで最も大事なことは欠勤控除のルールをしっかりと就業規則で定めることです。
例えば手当を複数支給している場合、欠勤控除の計算式に含める手当はどれにするのか?
出勤日数が著しく少ない時の計算方法はどうするのか?
社会保険料や住民税などが控除できないときの取り扱いはどのようにするのか?
このようなことを前もってしっかり決めておく必要があります。

法律に違反したり、従業員が行政や司法に申し出てトラブルに発展したりしないよう
しっかりと正しくルールを作りましょう。

最後に

欠勤控除などの給与計算は正しく行うことが当たり前です。
しかし、かなり難しく問題が起こるとすぐにトラブルになります。
そして間違いやすく、たくさんのケースがあるため間違わないことが難しいです。
さらに、正しい計算方法や法律に詳しくない方も多く
意図せず間違いや法律違反をしてしまい、問題が起きた時に取り返しがつかなくなることも
珍しくはありません。

そんなことにならないよう、わからないこと疑問に思うことがあれば問い合わせください。
規程の改定やルール作りに関してもご相談ください。

リンク:厚生労働省_労働基準法第24条(賃金の支払)について
リンク:厚生労働省_労働条件・職場環境に関するルール

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