従業員が休職する時に気をつけるべきことは?~社会保険労務士が解説する休職への対応方法~

従業員が休職する時に気をつけるべきことは?~社会保険労務士が解説する休職への対応方法~ 労務管理

社員が体調をくずしたりケガをした場合、仕事ができなくなってしまいます。

その時に会社は次のどちらかを判断する必要があります。
働けなくなってしまった社員を解雇する
働けなくなってしまった社員を長期に休ませる

日本の労働法では解雇は著しく難しく、中小企業ではほぼ不可能です。
少ない社員を長期間休ませることは、中小企業の人員では難しいことです。

どちらを選ぶにしても必ず会社が対応しなければならない”休職”について解説します。

休職に関する規定の作成と確認

社員に休職を与える場合、休職に関する規定が必要になります。
これは、規定が無いと休職を与えられないというよりは、休職を与えるときに条件や手続きが煩雑でしっかりと説明をしなければ後でトラブルになってしまうからです。

休職の規定で必要な事柄
・休職の理由(疾病・ケガなど)
・休職期間
・休職中の給与や保険料について
・休職期間の延長や復職条件について
・復職後の勤務体制や業務の調整について

休職の理由(疾病・ケガなど)

休職を与える場合の基準をしっかりと明示する必要があります。
社員が休職するに足る理由があるかどうかの判断基準を明示します。
例えば、疾病の場合は「医師の診断書があること」などです。
しっかりと基準を明確にしておかないと従業員間で不公平感が生まれる可能性があります。

【ポイント】
・従業員の申請内容の確認方法を規定する。
・医師の診断書などの提出を求める規定を作る。(費用に関すること含む)
・従業員間での差を作らないような規定にする。

休職期間

休職は労働基準法には規定がありません。
そのため、法律による最低基準が存在しないため、会社がしっかりと期間を定め
休職に必要な期間を見極める必要があります。

休職中の給与や保険料について

休職期間中の給与の支払いや社会保険料などの保険料等の徴収方法を決める必要があります。
普段、月給制で給与を支払っている場合で遅刻や欠勤などで給与を控除しない会社がまれにあります。
そのまま放置すると、休職期間中も給与の支払いが必要になってしまうことがあります。
そのようにならないよう、給与の取り扱いをしっかりと規定し、併せて、給与の支給が無い時の社会保険料の取扱いも決めておく必要があります。
休職中であったとしても社会保険料の免除はなく、支払いが必要になってしまいます。
対策をしておかないと会社がすべての保険料を支払い、回収ができなくなってしまいます。
しっかりと規定しておきましょう。

【ポイント】
・休職中の給与の支払いについて規定する。
・健康保険料などの取扱いについて規定する。
・休職期間中の有給休暇の取り扱いなど細部も規定しておく。

休職期間の延長や復職条件について

休職期間は法律では期間の最低基準はありません。
そのため、会社が決定した期間を原則としますが、あくまで原則ですので個別の社員の状況に応じて延長が必要なこともあり得ます。
この場合の延長の基準や上限、延長の手続きを明確に規定する必要があります。
さらに職場復帰をする時の基準や復帰後のフローも決めておく必要があります。

【ポイント】
・休職期間の延長基準を明確に規定する。
・延長申請の手続きや判断基準(医師の診断書など)
・復帰の基準や復帰の際の必要事項(医師の診断書など)

復職後の勤務体制や業務の調整について

社員が休職から復帰する際に必要な手続きや復帰後の業務なども決めておきます。
しっかり戻ることができると思わなければ治療に注力できません。
また、復帰してもすぐに万全の状態になるわけではありません。
業務の変更なども規定しておく必要があります。

【ポイント】
・復帰前後による医師の意見徴収など
・復帰した後、必要に応じて業務転換を行うことを規定しておく。

その他注意事項

何度か明記していますが、労働基準法には休職の規定はありません。
ですが、基準を会社の自由にできるわけではありません。
会社の利益を確保しつつ、従業員の権利を守る必要があるためバランスをとる必要があります。
加えて社員とコミュニケーションを持つことが必要になります。
休職に入る前だけでなく、休職中も社員の状況や状態を把握できるようにコミュニケーションをとれるようにしましょう。
コミュニケーションは常日頃からの関係性が重要になります。

最後に、休職期間が満了した後に復帰ができない場合、解雇を行うことになります。
休職期間を全くおかず、解雇することは日本の判例上でも認められることはまれです。
そのため、解雇を行う場合でも休職はほぼ必須です。
しかし、休職を与えたからと言って解雇が認められるわけではありません。
不当解雇にならないよう、長期休職に対する解雇基準を明確にし、解雇事由の正当性を確認する。
さらに専門家への相談を必ず行い、安全に解雇ができるように準備が必要です。

最後に

休職には、明確な条件やルールなどを規定し、社員すべてを公平に対応することが重要です。
また、法的義務を遵守し、従業員に対して十分なサポートを行うことが、会社にとっても社員にとっても円満な結果を生み出します。
休職期間中や復帰後の条件や判断基準を明確にし、透明性を保ちつつ適切に管理できるように準備をしましょう。

ご相談はこちらから

リンク:厚生労働省_心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
リンク:厚生労働省_モデル就業規則について
リンク:休職についての相談はこちらから

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