在職老齢年金が大改正──2026年4月から何が変わるのか?

在職老齢年金が大改正──2026年4月から何が変わるのか? 年金

2026年4月から年金をもらいながら働く人に関する法律が変わります。
一見、会社には関係が無いように感じるかもしれませんが
会社の人事制度や給与設計には直接的な影響が出ます。
特に、高年齢者を雇用している会社さんや、今後シニア層の雇用をお考えの
会社さんには必要な情報になります。
年金と人事労務の専門家である社会保険労務士が解説します。

◆ 在職老齢年金とは

在職老齢年金とは、厚生年金を受給しながら働く場合に、賃金と年金の合計額が一定額を超えると年金の一部または全部が支給停止される制度です。
給与が毎月入ってくるのであれば、年金金額が減ったとしても生活が可能なのでは?
という事を考えて設計された制度です。
働くほど年金が減ってしまうという意見や
年金をもらいながら働いている社員が、年金を減らしたくないという
理由で働く時間を抑えてしまうなどの事が起きていました。

◆ 2026年4月からの大きな変更点

支給停止基準額が大幅に引き上げられます。

  • 現行の基準額(月額):約51万円
  • 改正後の基準額(月額):約62万円へ引き上げ
    ※賃金と年金の合計額が基準を超えた場合、超過分の年金が一部支給停止となる仕組み。今回の引き上げによりこのラインが高くなる。

この変更による影響

  • 基準額が62万円になることで、これまで支給停止となっていた人の多くが年金を満額受け取れる可能性が高くなる。
  • 厚生労働省の試算では、約20万人以上が年金減額の対象から外れる見通しとされている。

※ この改正には、少子高齢化による労働力不足や、高齢者の就労促進が社会課題となる中で
  年金制度が「就労と年金受給の両立を妨げない仕組み」へと転換することを目的としています。

◆ 企業の人事担当者・社長が知っておくべきポイント

① 「年金が減るから働けない」という働き控えの防止

支給停止基準額が月62万円程度まで引き上げられることで、

  • 「これ以上働くと年金が減る」
  • 「残業や役職手当は受け取れない」

といった従来の制約は大きく緩和され、解決されます。

👉 人事担当者の注意点
これまでの制度を前提とした説明を続けていると、
✔ 本来働ける人材が労働時間を抑えてしまう
✔ 誤った情報による不満・トラブル
につながるおそれがある。

制度変更を踏まえた説明資料や面談時の説明内容の見直しが必要になる。

社労士の支援内容

  • 定年後再雇用者・65歳以上社員の給与水準の整理
  • 業務内容・責任に応じた賃金設計への見直し
  • 年金制度を踏まえた「働き損が生じにくい給与体系」の検討支援

👉 経営者・人事担当が制度改正を誤解したまま賃金を決めてしまうリスクを防ぎます。

② 高年齢者の給与設計の「上限設定」を見直す余地が生まれる

改正により、一定水準までの賃金であれば年金が減らない範囲が拡大するため、

  • 定年再雇用後の賃金
  • シニア社員の役職手当・専門職手当
  • 業務量増加に伴う報酬調整

    このような手当や賃金を「年金を考慮して低めに抑える」必要性は以前より小さくなる。

👉 社長・経営者の視点

  • 経験豊富な人材に責任ある仕事を任せやすくなる
  • 若手不足を補う即戦力としての活用が現実的になる
  • 「年金が減るから」という理由で報酬を抑える説明は、納得感を得にくくなる

③ 定年後再雇用制度・シニア雇用方針の再設計が必要

在職老齢年金の緩和は、次の制度とセットで考える必要がある。

  • 65歳以降の継続雇用制度
  • 70歳までの就業機会確保(努力義務)
  • 同一労働同一賃金との関係

👉 実務上のポイント

  • 「年金を理由に賃金を一律に下げる設計」は、説明が難しくなる
  • 職務内容・責任・成果に基づく賃金設計がより重要になる
  • 就業規則や再雇用規程の見直しを検討する企業も増えると考えられる

    社労士の支援内容
  • 定年後再雇用規程・賃金規程の見直し
  • 高年齢者の職務内容・評価制度の整理
  • 不合理な待遇差とならないための法的整理

👉 「年金を理由に賃金を下げている」と評価されるリスクを回避できます。

④ 給与計算・年金説明の“境界線”に注意

在職老齢年金は会社が計算・調整する制度ではないが、

  • 給与額の設定
  • 働き方の提案
  • 制度に関する説明

が年金に影響を与えるため、「説明責任」と「線引き」には注意が必要となります。

👉 実務対応の考え方

  • 年金の最終判断は「年金事務所・本人」であることを明確にする
  • 会社は「制度概要」と「一般的な影響」を説明するに留める
  • 個別の年金額試算は専門家(社労士等)への相談を促す

社労士の支援内容

  • 会社が説明すべき範囲・すべきでない範囲の整理
  • 年金相談が発生した場合の対応フロー構築
  • 年金事務所・専門機関への案内方法の整備

👉 会社・人事担当が年金額を保証してしまうリスクを回避します。

⑤ シニア人材活用を進める企業ほど、制度理解が競争力になる

今回の改正は、

「高齢者に、もっと働いてもらうことを前提にした制度」

への明確な転換を意味する。

👉 制度を正しく理解し、

  • 働き方の選択肢を提示できる企業
  • 年金を理由に不合理な処遇をしない企業

このような会社は、シニア人材から選ばれやすい会社となれます。

社労士の支援内容

  • シニア人材の活用方針整理(戦力化・役割明確化)
  • 若手人材との役割分担設計
  • 長期的な人件費コントロールを踏まえた制度設計

👉 単なる制度対応にとどまらず、経営視点での人事戦略支援が可能です。

◆ まとめ(企業向け視点)

2026年4月からの在職老齢年金の見直しは
「高年齢者の賃金は抑えるもの」という従来の常識を見直す契機となります。
人事制度・給与設計・説明体制をこの機会に整理し
年金制度を理解したうえでのシニア活用戦略を検討することが、今後の人材確保と組織の安定につながと思います。
また、在職老齢年金の改正は、「年金の話だから個人の問題」と捉えられがちですが、
実際には企業の給与設計・雇用制度・説明責任に直結する重要な制度改正です。

当事務所では、
✔ 制度改正を踏まえた人事制度整備
✔ 経営者・人事担当が安心して判断できる環境づくり
✔ 高年齢者雇用を“負担”ではなく“戦力”に変える支援

を通じて、企業の持続的な成長をサポートしています。
分からないことや、説明に困った場合は、ぜひお問い合わせください。

リンク:日本年金機構_在職老齢年金の計算方法
リンク:厚生労働省_年金制度の仕組みと考え方
リンク:厚生労働省_在職老齢年金制度の見直しについて

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