社会保険労務士が解説する固定残業代(みなし残業代)のメリット・デメリット

社会保険労務士が解説する固定残業代(みなし残業代)のメリット・デメリット 労務管理

固定残業代(みなし残業代)という言葉を聞いたことはありますか?
会社側からは残業代を削るための方法として、従業員側からはブラック企業の代名詞として様々なところで話で上がっていると思います。
そんな固定残業代(みなし残業代)のメリット・デメリットを労働法令の専門家である社会保険労務士が解説します。

そもそも固定残業代(みなし残業代)とは?

固定残業代(みなし残業代)とは、名称に関わらず、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対しての割増賃金を含めた金額を定額で支払う制度のことを言います。
厚生労働省のパンフレットより

つまり、最初から残業代を支払ってしまうという制度です。

固定残業代(みなし残業代)のメリット

固定残業代(みなし残業代)を導入すると会社側・従業員側ともにメリットがあります。

企業側のメリット

・給与計算の手間削減
・業務効率の向上

この様なメリットがあります。

固定残業代(みなし残業代)で支払い済みの時間まで、煩わしい給与計算の手間はいりません。
もし、設定した時間を超えた場合は、超えた時間分のみの支払いで済みます。
これにより、残業代計算が楽になります。
また、残業をしてもしなくても、固定残業代(みなし残業代)は支払われるので、従業員としては早く業務を終わらせるよう意識づけできます。
そのことにより、業務効率向上も期待できます。

従業員側のメリット

・残業時間が少なくても満額固定残業代(みなし残業代)が支給される。
・毎月の給与が安定する。

この様なメリットがあります。

固定残業代(みなし残業代)として30時間分の残業代を支給されているが、実際の残業が10時間だった場合でも30時間分の固定残業代(みなし残業代)が支給されます。
そのため、業務を早く終わらせることができれば従業員にとってはプラスになります。
また、多くの給与を貰うために意図的に残業をすると考える方もいますが、固定残業代(みなし残業代)を導入していれば、そのような残業はしなくても、毎月安定した給与を支給されます。

どちらも従業員にとってメリットがあるといえます。

固定残業代(みなし残業代)のデメリット

もちろんデメリットはあります。
固定残業代(みなし残業代)のデメリットの多くは”勘違い”から発生します。

たとえば、固定で残業代を支払っているんだから追加の残業代はいらない。
こういった勘違いから、未払賃金が発生します。
固定で残業代を支払われているんだから、支払われている時間は残業しなければいけない。
この様な考えから長時間労働が発生します。
たくさん残業代を支払っておけば問題は起きないだろう。
この場合、給与の最低賃金割れの危険性が発生します。

この様にたくさんの勘違いから、多くの法令違反であったり、労働環境の悪化が起きてしまいます。
デメリットを放置すると、行政からの指導や従業員からの訴訟リスクが高まります。
しっかりと理解し、制度を導入するようにしてください。

最後に最も大きな誤解を解きたいと思います。
固定残業代(みなし残業代)を導入しても残業代の削減はできません!
固定残業を導入することで残業代が削減できると考える方は多いようですが、残業代の削減には絶対につながりません。
残業代を削りたいから固定残業代(みなし残業代)を導入しようとお考えの場合はやめましょう。

固定残業代(みなし残業代)の導入手順

制度導入のためには様々な手順が必要です。
① 固定残業代の計算方法や支給する残業時間の決定
② 従業員への説明・質問を受け付ける
③ 各従業員へ固定残業代(みなし残業代)の金額の周知
④ 就業規則の改定・作成
⑤ 従業員代表の選出・意見聴取
⑥ 就業規則の提出と周知

この順番で対応します。
基本的には、就業規則のルール変更と変わりませんが、最低賃金を下回らない様にしたり、従業員に納得をしてもらえるように対応する必要があります。

まとめ

世間ではブラック企業の代名詞となってしまっている固定残業代(みなし残業代)ですが、しっかりと対応することで会社にも、従業員にもしっかりとしたメリットがあります。
間違いないようしっかりと制度を導入し、トラブルにならないよう気を付けましょう。

もし、不明点や質問があればこちらからお問い合わせください。
こちらも確認してください。
リンク:厚生労働省_しっかり学ぼう!働くときの基礎知識

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