解雇規制の緩和とは?

解雇規制の緩和とは? 法律

自民党総裁選の立候補者の一人が「解雇規制緩和」について取り上げ
他の立候補者と議論になったり、ネットで様々な意見が噴出したり話題になっています。
「解雇規制緩和」はなぜ問題視されるのか?
本当に必要なのか?
労働の専門家である社会保険労務士が解説します。

解雇規制緩和とは具体的に何をする?

「解雇規制緩和」と聞いて多くの方は、解雇がしやすくなる政策だと感じると思います。
日本では解雇がしづらいというのはよく言われますが、そのハードルを下げ
解雇をしやすくし、人材の流動性を高めることを目的に行われる
といわれています。

今回は整理解雇要件を緩和する案で、会社の従業員を減らしたり、入れ替えを考えた時に
今の会社には仕事が無いと判断した時に会社がとらなければいけない工程を簡略化し
人員整理をしやくするものだといえます。
実現することで簡単に解雇されてしまうので反対だという意見が多いように感じました。

日本は解雇しづらい国なのか?

ネット上で「日本は解雇しづらい!!」という意見や
「そんなことは無い!先進国では解雇しやすい方だ!!」という真逆な意見が出ていますが
どちらが正しいのでしょうか?

この議論の時によく使用されているのは
”OECD加盟国における世紀労働者の解雇規制の厳格性”というOECDが出している資料で
消費者庁のホームページにある資料です。

これは各国の解雇のしやすさを数値化し、数字が大きい方が労働者保護になっている(解雇しづらい)
と判断できる資料です。
資料内で日本はG7の中で4番目に解雇しやすい(真ん中くらいの難易度)となっています。
この数字だけを見ると、日本は解雇しづらいと事は無いように見えます。
現に同じG7内のフランスと比較すれば、まだ解雇はしやすいと思います。

しかし、数値自体は平均化されたもので実務的に見れば、とても解雇がしやすいとは言えません。

例えば、不当解雇の争いの場合
多くの国は解雇は正当だったという証拠を会社が証明すればいいのですが、日本では従業員がしっかり働いていたことを証明し、これに会社が反証する形をとっています。
そもそも日本の雇用契約は終身雇用や年功序列などの考え方が残っていて、生産性を評価したり、業務の難易度を数値化して適正に評価する慣例が少ないといえます。
そのため、しっかりと準備をし客観的な証拠を用意していないと会社が負けることになります。
そして、この準備が著しく手間がかかり難しいのです。

数字や制度だけをみれば解雇しづらいとは言えませんが、実務になると日本では解雇はまずできません。
解雇をしても、そのあとに不当解雇の訴えを起こされ、負けてしまうからです。
従業員からの訴えに勝つためには、ものすごい時間と労力が必要になり、現実的ではありません。
そのため、日本では解雇がしづらいと言われています。

解雇規制緩和はしない方が良いのか?

これは、その人の立ち位置や考え方で大きく意見が分かれると思います。

そのような言い方をしても、解雇規制緩和がされれば、解雇は増えると思います。
その会社に居続けたい人は絶対に反対だと思います。
会社側から見れば、生産性が低い人員を入れ替えることができるので歓迎されると思います。

どちらかの立場に立たず、起こりうる現象だけを見ると

・解雇が増える。
・会社の人員入れ替えが増える。
・仕事のプレッシャーが高まる。
・頑張る人が評価されやすい。


この様な事が起きると思います。
良い面・悪い面両方があるので、どちらがいいのかは明言できません。
しかし、昨今の日本の労働市場や雇用契約などを考えると
いつかは解雇規制緩和が必要になると思います。

解雇規制緩和は必要なのか?~私の考え~

私は、今はまだ解雇規制緩和は早いのでは?と考えます。
解雇規制を緩和することで、会社が正社員を雇う際の躊躇が確実に緩和されます。
私はたくさんの会社さまから入社面接のタイミングで雇うべきかの相談を受けたことがあります。
皆さんに共通しているのは「解雇できないから間違えたくない」という考えです。
ミスマッチが起きた時に、解雇で解消できるのであれば、このハードルは下がります。
この考えが広がれば、確実に求人は増え、解雇されたとしても再就職が難しくなくなります。

ですが、今はまだ会社側の考え方や労働に関する知識も浅く、正しく使われない可能性が
高いと私も感じます。
もし、解雇規制緩和を行うのであれば、解雇時の金銭補償をもっと充実するほかに
失業保険を含めた失業時の不安を解消する方法も充実させる必要があります。

個人的には、今はまだ早いだけでいつかは必要だと考えています。
日本の生産性を高めるために、ミスマッチを減らし、個人の能力を発揮しきれる会社に
就職できるサポート体制も必要だと感じています。

リンク:yahooニュース_解雇規制緩和めぐる誤解に説明
リンク:厚生労働省_労働契約の終了に関するルール

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