社労士が解説する出産時育児休業~産後パパ休業~の対応方法

社労士が解説する出産時育児休業~産後パパ休業~の対応方法 従業員対応

令和4年4月から、徐々に改正される”育児休業法”ですが、新しい育児休業が新設される令和4年10月の改正まであとわずかとなりました。

会社ではもう準備はできましたか?

何が変わるのか?
対応するには何をしたらよいのか?
従業員にはどのようなメリットがあるのか?
準備ができていない会社には、どんなデメリットがあるのか?


法律が施行される前に準備するべきことをご案内します。

出産時育児休業~産後パパ育休~とは?

出産時育児休業~産後パパ育休~は、子供が生まれてから8週間以内に4週間(28日間)とることができる育児休業で、令和4年10月から新しく新設される休業です。
通常、出産をした女性は、”産後休業”期間中ですので女性が取得することが想定されていません。
そのため”産後パパ育休”と言われて、男性も育休を取得するためのものと考えられます。

取得するために会社へ申し出る期間も、2週間前までと育児休業の1カ月前までに比べ短縮されていて従業員も取得するかを悩むことができます。
また、分割でとることも可能で、条件さえ整えば休業中に勤務をすることもできる制度で、使い方によっては、会社、従業員ともにプラスになる制度となっています。

出産時育児休業~産後パパ育休~と育児休業の違い


実は、この二つは全く違うものです。
以下が簡単な違いです。

比較画像
                                出典:厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内から

出産時育児休業~産後パパ育休~は女性の産後休業の期間に男性も休めるように新設されるもの
今ある制度では”パパ休暇”と非常に似ています。

パパ休暇は出産時育児休業~産後パパ育休~が新設されることで廃止されますので、似ている制度があった程度の認識で問題ありません。

表にある通り、出産時育児休業~産後パパ育休~と育児休業は全く違うもので、両方使えるように制度設計されているものです。

出産時育児休業~産後パパ育休~導入の3ステップ

新しい制度を社内で運用するためにはいくつかのステップを踏む必要があります。
このステップを大きく分けて3つに分けて説明します。

・制度を学ぶ
まずは制度を知る必要があります。
育休は、誰手も知っている制度ですが、ほとんどの人が内容をよく知りません。
育休中にもらえるお金や社会保険料・税金の取り扱いまでしっかりと理解している方は少ないです。
まずはどの様な制度なのかを確認し、従業員に質問されても回答できるようにしてください。

・会社のルールを見直す
新しい制度を会社へ導入するためにはしっかりと会社のルールを見直し、どのように導入すれば会社で問題なく運用できるかを考える必要があります。
例えば、出産時育児休業~産後パパ休業~の導入には次のようなことを決める必要があります。
・従業員がどのように育児休業に申し出るのか
・休みに入る前の引継ぎはどの様にするのか
・休み中の仕事をどのように対応するか
・休みが明ける際の仕事の復帰の仕方
最低でも、以上のことは会社のルールを見直し、運用できるよう準備が必要です。

・就業規則の作成と従業員への説明
ルールの見直しが終わったら、見直したルールを就業規則に記載し、変更しなければいけません。
ルールを作るだけでは運用することはできません。
しっかりと就業規則の変更を行い、変更した内容を従業員へ説明をしましょう。

育休についての説明をしっかりとすることも会社の義務ですので、しっかりと対応を行い、不明点の解消に努めて下さい。

また、このタイミングで労使協定も締結し、急な出勤や繁忙の際に対応できるよう準備をします。
この様な準備も、しっかりと対応をしていなければできません。

この3ステップを踏むことで、出産時育児休業~産後パパ育休~の導入は完了します。
文字だけでは意外と簡単そうですが、一つひとつはなかなか面倒で、法律の知識や従業員対応の経験が必要になります。
しっかりと準備をし、対応をしてください。

出産時育児休業~産後パパ育休~導入前の注意点


近年、男性の育児休業取得が増加してきましたが、それでも80%以上の女性が取得していることに比べると、やっと10%を超えた程度です。

こうなっている理由はたくさんありますが、今回の出産時育児休業~産後パパ育休~の新設や国の取得率向上のための取り組み、さらに従業員の考え方の変化などで長期的に考え、育児休業の男性取得率は増加すると予想されます。

現在、会社で男性従業員が「育児休業を取りたい」と申請してくることはほぼないでしょう。
ですが、今回の出産時育児休業~産後パパ育休~は取得希望の申請がある可能性は高いです。
「うちには育休無いから」や「忙しいから取れない」、「へぇ~、取るんだ…」というような対応をしてしまうと、会社が一方的に不利になってしまいます。
法律で認められた休みを取得できないようにさせる事自体が、法律違反であり、労働基準監督署からの是正勧告を受けてしまいます。

そんなことにならないよう、しっかりと以下の対応をしてください。

・業務の引継ぎや復帰のマニュアル化
出産時育児休業~産後パパ育休~は4週間(28日間)の休業となり、労使協定を締結することで、その間も勤務することはできますが、それでも、これまで長期の休みを想定していなかった会社では、戸惑ってしまいます。
会社で定めた業務の引継ぎ方法や復帰方法を現場で使用できるように整え、問題なく事業を継続できるよう準備をしてください。

中小企業だから、事業の通常の営業ができなくなるからというような理由で出産時育児休業~産後パパ育休~の取得を断ることはできません。
準備をし、対応をすることを求められていますので、しっかりと準備をしましょう。

・従業員への教育
日本ではまだまだ男女の性別により仕事が決められていると考えている方は少なくありません。
男性は外で働き、女性は家を守るというような考えです。
そんな考え方を持つ方が上司であったり、会社の過半数であった場合、せっかく育休の制度を作っても運用できないし、最悪、育休を取得しようとした部下にパワハラまがいな発言をし、問題になってしまいかねません。
そんなことが起こらない様、しっかりと従業員の教育をし、トラブルを未然に防いでください。

社長の中には休みは無い方がいいから、なにもしないという方がいましたが、何も準備していなかった場合、従業員から出産時育児休業~産後パパ育休~の取得希望があった時に困ってしまいます。
断ることが法律違反になりますので、上でも書きましたが、その瞬間、労働基準監督署の是正勧告の対象になります。

労働基準監督署への対応をする場合、手間がかかり、そのあとの会社経営にも大きな影響が出てしまいますので、そのようなことにならない様対応をお考え下さい。

・経営者の考え方を変える
働き方改革や、従業員の考え方の変化、労働環境の変化などたくさんの変化がある時代となりました。
これまでのように、「給与を支払っているのは会社だ!」というような考え方や、「従業員は会社の命令を聞く義務があるんだ」というような考えでは、会社が大きな損害を受けてしまう時代と言えます。

従業員だけでなく、会社のトップである社長が率先して変わることで、今後も法律に対応ができ、今後も従業員の協力のもと成長し続ける会社になれるかと思います。

まとめ

まもなく施行される出産時育児休業~産後パパ育休~ですが、準備をしっかりしておかないと、急に従業員が休んでしまい、業務に穴をあけてしまったり、無駄なトラブルに会社が巻き込まれたりします

しっかりとルールを決め、就業規則を見直し、従業員の教育を行う。
ページ内の3ステップをしっかりと踏んで、問題なく新しい制度を迎えて下さい。

もし準備に不安があれば、専門家へご相談ください。
しっかりと御社にあったルール作りをお手伝いさせていただきます。

お問い合わせはこちらから。

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