【概要】
大手物流会社の支店にて有期雇用契約で勤務する契約社員が、会社に対して、正社員と同一の権利を有する地位にあるとして、正社員に支給されていた賃金の差額と、その他手当(無事故手当、作業手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、皆勤手当、家族手当)及び昇給や賞与、退職金の支給を求めた。
【判決】
一審判決では、正社員は将来支店長など事業の中核を担う可能性がある等、責任を有するが、契約社員はそのような責任はなく、事業の中核を担うべき人材ではないなどとして実費補償的な意味合いがある通勤手当以外の諸手当等は不支給だとしても不合理ではないと判決を下した。
しかし、高裁判決では判断の枠組みこそ同じであったが、通勤手当のほか、無事故手当や作業手当、給食手当などについても契約社員に支給しないことは不合理であると判断をした。
これは手当の意味が社員と契約社員で同じだと判断されるものについても支給を命じる物であった。
※無事故手当は事故の有無によって支給が決まるもので、責任の有無で変わるものではないため
そして、最高裁での判決では、高裁の判決に加え、皆勤手当てについても労働契約法20条に違反していると判断されました。
今回の判決は、労働契約法違反の法的根拠やその判断基準、さらに主張立証責任を明示されたほか、個別の労働条件の性質を個別に判断し、労働契約法20条に違反するかを検討するなど実務上大きな意味を持つ判決であるといえます。
【会社の対応】
今回の判決により、正社員と契約社員の報酬や労働条件の違いの考え方が示されました。
これまでは一般的に「正社員だからこの手当、契約社員やアルバイトだからこの手当」というような一律的に考えられてきた報酬ですが、今回の判決が出たことにより、より1つ1つの手当の意味合いや労働の実態などをしっかりと考慮し、正社員と契約社員との間で労働条件の報酬の際を付けなければ「法律に違反しているので遡って支給するように」という判断を下されてしまいかねません。
しっかりと従業員の業務内容や契約の内容を考慮し、報酬の差をつける場合や手当の有無を考えるようにしましょう。
今回の判決で正社員と契約社員の間で報酬の差をつけることが否定されたわけではありません。
判決文でも”契約法20条に違反するから即同じ条件になるわけではない」と明言されています。
会社内で将来のキャリアなどを考慮し、手当などを付けてモチベーションを高めつつ、人材育成を行えるようにしましょう。
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