2026年4月スタート「被扶養者(130万円の壁)」の判定方法が変わります — 企業が取るべき実務対応

2026年4月スタート「被扶養者(130万円の壁)」の判定方法が変わります — 企業が取るべき実務対応 ブログ

2026年4月1日より、健康保険・厚生年金における被扶養者認定(いわゆる「130万円の壁」)の判定方法が見直されます。
これまでは「今後1年間の収入見込み(過去の実績も含む)」で判断されていたものが
労働契約(労働条件通知書等)に記載された賃金等に基づく年間収入の見込みで判定される
運用に変更されます。
どのように判断基準が変更になるのか?
この変更に対応するため、会社はどのように準備をしなければいけないのか?

変更の要点(企業・人事担当者がまず押さえるべきこと)

  1. 判定の基準が「契約書ベース」へ
    労働条件通知書や雇用契約書に記載された時給・所定労働時間・勤務日数などを用いて算出した「労働契約で見込まれる年間収入」が基準となります。契約書上に明確な規定がない時間外手当等は原則、年間収入に含めない運用となります。
  2. 給与以外の所得(年金・事業所得など)がある場合の扱い
    給与収入以外の収入が見込まれる場合は、別途合算して判定されます。(対象者が給与収入のみであるかの確認が重要)
  3. 見込み残業(所定外賃金)の扱い
    これまでは将来の残業見込みも含めて判定する運用が行われていましたが、今後は契約段階で見込みが難しい時間外労働に対する賃金等は年間収入に含めないと明記されています。繁忙期の残業が契約に明示されていなければ、その分で自動的に扶養から外れるリスクは低くなる見込みです。
  4. 従業員への説明と書類整備の重要性が増す
    被扶養者認定時に、労働契約書の写しや労働条件通知書の内容を求められる可能性が高まります。人事側での書面整備と従業員への周知が不可欠です。

企業が行うべき実務対応(チェックリスト)

  • 労働条件通知書(雇用契約書)の見直し:時給・所定労働時間・勤務日数・通勤手当・賞与・各種手当の内訳を明確化。残業の有無・固定残業の仕組みは必ず明記すること。
  • 繁忙期の残業が想定される場合は契約に明記:繁忙期のみ残業が発生する場合は、変形労働時間制(1年単位)や固定残業の制度設計、または36協定の特別条項で運用ルールを定める。
  • 求人票・採用案内と実際の契約書の整合性確認:募集時の条件と契約書の内容が一致しているか。表示に不備があると後のトラブルにつながる。
  • 扶養認定に必要な証憑の準備:労働条件通知書の写し、賃金台帳や固定残業の根拠等を保存しておく。保険者から求められるケースを想定し、すぐ提示できる体制を作る。
  • 従業員説明(Q&A作成):扶養の要件変更点、契約上の記載が扶養認定に与える影響、繁忙期の扱い等を従業員に周知。意図せぬ就業調整を避ける。

雇用契約書(労働条件通知書)で使える文言例

以下は契約書に追記・明示しておくと良い例文です。必要に応じて御社の実情に合わせて数字や期間を修正してください。

1)基本給・手当の内訳(例)

第○条(賃金)
1. 基本給:月額 ○○円(年額 ○○円相当)
2. 通勤手当:実費支給(上限 ○○円/月)
3. 賞与:業績および勤務成績により支給(支給の有無・算定方法を別途定める)
4. 固定残業手当(導入する場合):月○時間分として月額△△円を支給する。固定残業時間を超える時間外労働が発生した場合は、法定割増率により別途支払う。

(注)固定残業を導入する場合は「何時間分の手当か」「超過時の清算方法」を明示すること。

2)所定労働時間・繁忙期の扱い(例)

第○条(労働時間)
1. 所定労働時間:1日 ○時間、週○日(勤務時間 ○○時〜○○時、休憩○分)
2. 繁忙期の取扱い:業務の繁忙により所定労働時間を変更する必要が生じる場合は、事前に労使協議の上、別紙「勤務カレンダー」または就業規則に定める方法で通知すること。

(変形労働時間制を採用する場合は、別途労使協定と勤務カレンダーを添付。)

3)時間外労働・36協定(例)

第○条(時間外労働)
1. 当社は業務の都合により時間外・休日労働を命ずることがある。時間外労働は労使協定(第36条協定)に基づき実施する。
2. 繁忙期等で特別に延長が必要な場合は、36協定の特別条項に基づき実施することがある。

(36協定の特別条項を併せて就業規則等で公開しておくと良い。)

Q&A(よくある質問)

Q1:繁忙期の残業が契約に書かれていないと扶養から外れる?
A:原則、契約段階で明確に見込みが立たない時間外労働は年間収入に含めない運用になります。ただし、実際の賃金が契約と乖離して継続的に増加している場合は別途精査されるため、実績と契約の整合は常に保ってください。

Q2:固定残業を入れれば安心?
A:固定残業は有効ですが、表示不備や超過分の不払いがあると監督や紛争の対象になります。基本給と固定残業の内訳・算出根拠・超過時の清算を明確にしてください。

最後に(社労士事務所からのご提案)

2026年4月の運用変更は、従業員の「働き方」と企業の「採用運用」に直接影響します。特にパート・アルバイトの多い事業所では、雇用契約書・求人票・就業規則・36協定(特別条項)を横断的に見直すことを推奨します。当事務所では以下の支援を行っています:

  • 労働条件通知書・雇用契約書の文言チェック・修正案作成
  • 就業規則・36協定(特別条項)テンプレート作成および届出支援
  • 従業員向け説明資料(FAQ・周知文書)作成
  • 個別ケースの扶養判定サポート(保険者への提出書類作成支援)

ご希望なら、御社の実情(雇用形態の内訳・繁忙期の月数・想定残業時間など)をいただければ、御社向けの雇用契約書(文案)とチェックリストを作成します。お気軽にご依頼ください。
ご依頼はこちらから!

リンク:厚生労働省_「被扶養者の年間収入について(労働契約内容による取扱い)」事務連絡
リンク:日本年金機構_被扶養者認定における年間収入要件が変わります。

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